「若者の未来を創る就活ヘア」
近畿協議会代表 (奈良県) 今西 正樹
「若者の就活を応援したい」そんな思いを抱いたのは就職面接を控えたお客様がカットに来られたときのことです。
私はこれまでの一般的な知識と経験から「耳はすっきりと出して、エリは清潔感が出るように刈り上げましょう」と提案したのですが、お客様の要望はあまり短くしたくないということでカットした結果、中途半端なスタイルになってしまったということがありました。私の仕上げは本当に面接の手助けになっているのだろうか?という思いをそのとき感じたのです。
厚生労働省・文部科学省の行っている内定・就職状況に関する調査によると、平成26年3月に卒業した学生の就職状況は前年より改善してきました。
しかし大学生の就職活動に回復の兆しが見えていると言っても、企業側のルールが年々変わるなど状況は依然 厳しいものがあります。
若い世代の就労する機会が減少してしまうと、企業の成長力や競争力の低下を招くだけでなく、社会保障の担い手も足りなくなって将来への不安感の増大につながります。若者の危機は未来の日本の危機なのです。
私はこんな不景気な時代に就職活動をしている学生さんたちを少しでも手助けしたいと青年部会議で話したとき、自分と同じ思いをしている人が多くいることに気がつきました。そこで解決のために話し合った答えが、4年前に全理連で提唱された『就活ヘア』だったのです。
2014年、就活ヘアは奈良県の取り組みとして改めて動き出しました。私たちは就職面接について知るために、企業訪問や面接官を担当した経験のあるお客様に、面接と髪型に関するアンケートに答えていただきました。すると480社からの回答をいただくことができたのです。
そのうちにこの取り組みが近畿大学の知るところとなり、ご協力をいただけることになりました。そこで近畿大学経営学部に大学生の現状の調査と分析をしてもらうことで、我々独自の就活へアマニュアルを作ることができたのです。
ここから得られたデータによって企業は面接時に就活生のどこを見てどんな人材を求めているのか、また金融業や製造業など様々な業種に応じた好まれるヘアスタイルの傾向を知ることができました。
その結果お客様へのアドバイスも、「最終面接では一次面接の時よりはっきりと刈り上げを強調したほうが、清潔感やその企業に入りたいという意思を強くアピールできるのです。」と、以前より具体的に説明できるようになったのです。
マニュアルの解説とアンケートの分析結果を発表したセミナーは新聞やテレビなどのマスメディアにも取り上げられました。
このように就活ヘアを通して理容師法第一条にある『容姿を整える』仕事ができるわれわれの強みをPRできれば、もっと若者を理容店に呼び込むことができるのではないでしょうか。
そして我々理容師の技術や知識で就職活動を応援し手助けすることで、より多くの若者たちが雇用機会を得られることこそが、未来の日本への社会貢献となるのです。
私はこの取り組みを通じて理容組合の組織力と、世間が組合に抱く信頼感の大きさを実感しました。
その中でも、企業訪問の折に対応していただいた方にかけてもらった言葉を私は忘れることができません。
「あなたたちの取り組みはとても意義があると思います。学生と社会との意識のギャップを埋め、かれらが社会に出るための橋渡しになってもらいたい。私たちもそれによって早期離職者が減ることを期待しています」と。
私は理容師として一人でも多くの若者の容姿を整えることで、人生のターニングポイントとなる就活戦線に臨む彼らの背中を後押ししてあげたい。今後もしっかりと就活ヘアを広め、若者と社会をつなぐ大きな架け橋になりたいと心より願うばかりです。