(作品紹介)
89年の日本アカデミー賞を総なめにした向田邦子原作による傑作ドラマを、監督・降旗康男、撮影・木村大作、主演・高倉健の黄金トリオで映画化したヒューマンドラマの秀作。
男と男の友情、水田の娘とやがて学徒出陣する学生との純愛、水田の妻のつつましさ。向田邦子の描く世界は日本のふるさとを感じさせる。東宝株式会社・1989年・カラー114分
(ストーリー)
羽振りの良い中小企業の社長・門倉(高倉健)とまじめなサラリーマン・水田(板東英二)は見かけも性格も正反対ながら、神社の鳥居に並ぶ一対の狛犬、阿(あ)と吽(うん)のように親密で硬い友情で結ばれている。
昭和12年春、その水田が地方転勤から3年半ぶりに東京・山の手にもどり門倉と水田一家の家族ぐるみの付き合いが始まった。門倉は心の奥で水田の妻たみ(富司純子)にほのかな思慕を抱いており、水田もそれと知りつつ、むしろそのことを自慢にすら思っている。一見奇妙なこの3人の微妙で不思議な関係が、ゆったりとユーモラスに美しい四季の流れの中で展開していく。
(理容店の風景)
門倉の「ヒゲでもあたりに行くか」で始まる理容店の風景。カメラの真上からの俯瞰で、白黒格子のタイル床と二人並んでヒゲをあたる静かな清潔な店内の様子が、昭和初期のつかの間の平和を印象づけている。