(作品紹介)
政治的に最も抑圧されていた1960~70年代の韓国激動の時代を、家族のために生きた、ある理髪師の涙と笑いの物語。本国では観客動員200万人を超える大ヒットを記録した。
第17回東京国際映画祭・最優秀監督賞、観客賞受賞作品。2005年8月よりDVD、ビデオリリース。 アルバトロスフィルム・2004年・韓国作品・カラー116分
(ストーリー)
孝子洞ヒョジャドン の理髪師ソン・ハンモ(ソン・ガンホ)は、大統領官邸の近くに住んでいたという理由だけで、大統領の専属理髪師になってしまう。
ハンモは、おごりたかぶることもなく、まじめに淡々と仕事をこなすが、政治の世界の裏側を知り、いつしかそれに巻き込まれていく。そしてついには最愛の一人息子ナガン(イ・ジェウン)を拷問に陥れてしまう――ささやかに、そしてごく普通に生きてきたハンモ、妻ミンジャ(ムン・ソリ)、ナガンの3人が、激動の歴史に翻弄される姿を、事件をストレートに表現するのではなく、一市民の生活範囲内の出来事として丁寧に、時にコミカルに描いている。
(理容店の風景)
懐かしさを感じさせる街並みにとけ込んだ「孝子洞理髪店」は、入口の木戸に赤白青のサインポールをかたどった看板が掲げられている。
店内には、赤茶の理容椅子が3台並び、正面には、大統領の住む町の理髪店だからと飾られた大統領の写真がかけられている。
ラジオから流れる抑揚のないアナウンサーの声をBGMに、ハンモ夫婦と助手のジンギ(リュ・スンス)が他愛のない会話をしながら客の髪をカットし、ヒゲを剃る。ゆったりと過ぎる時間が心地よい。
ちなみに、大統領官邸には正式な理髪室はなく、大きな鏡台と普通の木製椅子が備え付けられた部屋で散髪が行われていた。