脱毛について

 

(1)男性型脱毛症(若ハゲ)は遺伝的要因が強い

 男性型脱毛症は男性には優性として発現するため、男性ホルモンが多い人が禿げるという説は昔からありました。あるアメリカの学者が怪我で睾丸を失った戦傷者を追跡調査したところ、本来は遺伝的に禿げる家系に生まれた人も禿げなかったといいます。また薄くなりかけていた人の場合は進行が止まっていたと報告されています。中国の官がんには禿げた人がいなかったという報告もありました。
  男性ホルモンは主に睾丸で作られており、睾丸の無い女性に禿げる人がほとんどいないということも男性ホルモン説の根拠とされていました。しかし、若ハゲの人とそうでない人の血液中の男性ホルモン(テストステロン)の量を調べてみるとほとんど差が無かった事から、男性ホルモンの量と若ハゲは無関係と分かりました。

(2)男性ホルモンに働く酵素(5-α―リダクターゼ)が鍵を握っている

 受容体にくっついた男性ホルモンはそのままでは活性がなく、酵素が男性ホルモンを還元することにより活性化し、強い男性ホルモン作用を持つことになります。睾丸から分泌された男性ホルモンは皮脂腺で活性化され、毛乳頭に降りてきて悪さをするのではないかと考えられているのです。つまり、皮脂の中の5-α-リダクターゼという還元酵素がテストステロンを活性化し、5-α-DHT(デヒドロテストステロン)となり、強力な男性ホルモン作用を起こし、毛母細胞の分裂を阻害するようになってしまうのです。

(3)男性ホルモンに対する感受性の高い人が禿げる

 男性ホルモンは細胞に直接働きかけることができないため、まず、細胞にある受容体(レセプター)とくっつく必要があり、そのため禿げるかどうかの鍵は受容体にあるのではと考えられるようになりました。研究者が探したところ、問題の受容体は頭髪やヒゲの毛乳頭に存在することが確認されましたが、若ハゲかどうかにかかわらず皆同じ位に受容体があることがわかり、男性ホルモンはヒゲや体毛を濃くするのに対し、頭髪にはなぜか反対の働きをしています。受容体自体の感受性の高さによるものかも知れませんが、この辺はまだ解明されていません。

(4)頭の形とハゲの関係

 ベンジャミン・ドロシィ博士の説によると「卵型の頭」で、卵の尖っている方を下に、丸い方を上にした形の頭の場合は、サイドや額が張っているため血液の流れが悪くなり、栄養が充分に毛根部まで届きにくくなりハゲてくると言っています。またシャートン・ヤング博士は、猿の頭皮を長円形に切り取り、残った頭皮を両方から引っ張って縫い合わせたところ、しばらくしたら人間と似たタイプのハゲができたといいます。この実験でわかるように、頭骨が張っていてサイドが張りやすい丸い頭にハゲが多いということができます。身の回りの細長い頭と丸い頭の人の、どちらにハゲの人が多いか調べてみたら分かるでしょうが、「才槌頭」「ビリケン頭」「金柑頭」などと言われる丸い頭にハゲが多くみられます。

 

(5)ヘアスタイルと脱毛

 ほとんどの場合が女性ですが、まれには男性の場合でもブラシや櫛の材質や使い方などが間違っていると薄くなってくることがあります。静電気対策がしてあるブラシを使い、髪にスジ道をつけるように毛先をとかし、次に中間から、最後に根元からとかすようにしましょう。
  ヘアスタイルによる脱毛で有名なのはポニーテールという馬の尻尾のように髪を引きつめて後頭部でまとめたスタイルや、日本髪やシニヨンというフランスで流行した日本髪の丸まげに似たスタイルなどで、これらのスタイルを長期間していると前頭部や頭頂部が脱毛のために薄くなってきます。これらのヘアスタイルはいずれも髪を強く引っ張ることが原因していますので、これらは「牽引性脱毛症」と呼ばれています。
  この牽引性脱毛症は、髪を引きつめている人の総てが脱毛してくるかというとそうではなく、父親や祖父などがハゲているというような遺伝傾向がある人の場合に、牽引性脱毛症になりやすいという調査報告があります。
  またこれらのスタイルをしたからといってすぐに脱毛してくるわけではなく、子供の頃にやっていると、大人になってから脱毛してくるというように10年以上も過ぎてから薄くなることがあります。 ポニーテールの場合は男性のH型脱毛のように髪際隅部と呼ばれる部分が薄くなり、日本髪などの場合は頭頂部が丸く回復しないハゲになってしまいます。


戻る

Translate »