「カッコイイと呼ばれたい」
近畿協議会代表(大阪府組合)河野 智子
今度生まれ変わっても又、理容師になりたい。
私はこれ迄、全日空のスチュワーデスや囲碁のインストラクター等をやっておりました。
しかし、どの職業も転職、離婚と苦労をかけた両親に少しでも楽をさせてあげたいと思う私には、今ひとつ安定感に欠け、一生やって行きたいと思える程、心がトキメかなかったのです。人は、「女性なのに何故理容なの?美容の方がもっと華やかに輝けるのでは。」とかおっしゃいます。でも私は断然理容派です。理容業は一生できる息の長い職業です。
昨年の大阪組合の調査で、大阪では70歳代の理容師が452名、80歳代86名、90歳代15名が今も元気に頑張っておられると知り、遅い年齢からのスタートで不安はありましたが、最近理容と言う職業が益々好きになってきました。
ところが皆さんご存知の様に昨年、日本フランチャイズチェーン協会から理容師法、美容師法の一元化、資格の相互受け入れ等と言う、規制改革要望書が出されました。
確かに、理容技術も美容技術もお客様にははっきりと差別化できないところ迄近づいて来ている事も事実です。しかしながら、私にはこの様な事はどうしても認める事が出来ません。もしもその様な事が認められるならば、理容業本来の基本を重んじる伝統的技術である刈上げや触感技術の極みとも言うべきシェービングの様な永遠不滅の魅力を秘めた技術の向上を阻むばかりか、規制改革や合理化の名の下に、低料金競争を助長し、そこから来る画一化、マニュアル化された空疎なサービスは、常々私達が目指して来たお客様一人一人の個性に合わせた「快適優美の提供」と言う事が出来なくなるのです。
今年、理容師免許を取られた方は全国で1,636名なのに対して美容の方はと言うと何と21,984名と理容の約13倍なのです。理容業の素晴らしさやプラスのイメージが今時の若い人達には全くと言って良い程伝わっていないのが実情で、どうしても一見地味で暗いイメージに見られています。
私は、4歳の頃から父の夢だった囲碁のプロ棋士になる為厳しく仕込まれインストラクターをやれる迄になったのですが、子供の頃はジジクサイ、根暗、ダサーイなんて言われて習うのが嫌で、嫌で仕方がありませんでした。
ところがどうでしょう。囲碁を題材にした漫画がブレイクするや、今では子供達は、囲碁をするのは、「カッコイイ!」、OLもサラリーマンも「知的だ、やってみようかな。」と大人気になっています。
又、スポーツの中では一番マイナーだった卓球も、愛ちゃんの出現で、今ではテレビ中継迄されて、全く新しいイメージに生まれ変わって来ました。
私は思うのです。私達理容師は社会において、人の身だしなみの第一ポイントであるヘアスタイルを担うプロです。そしてサロンはお客様にカッコ良さと快適さを提供する舞台です。
私達のヘアの乱れは疲れた雰囲気や生活観が現れ、汚れた衣服は不衛生の象徴で不快感を与えてしまいます。自分自身プロ意識を持って、お客様の身だしなみをプロデュースしていきたい。又、スチュワーデス時代に、「お客様の為に何かをして差し上げたいと思う感謝と奉仕の心を表そうとするなら、自然とお客様の立場に立った挨拶やサービスが出来る。」と教えられた事を思い出し、日々一期一会の心を大切に努めようと思います。
チャンスは必ず来る筈です、まずは私達理容師一人一人からプラスのオーラを発信し、「職業は何ですか?」と聞かれて「はい、理容師です。」「へえーカッコイイ!」と言われる様「頑張りましょう」。