「理容が私を支えてくれた」
東北協議会代表 (宮城県) 小野寺 真
唐突ですが、私はトランスジェンダーの男性です。生まれたときの性別は女性。性別適合手術を経て、今は戸籍上も男性として生活しています。
女性らしさを求められ、好きなヘアースタイルに出来ず苦しい思いをしたことがあります。
ヘアースタイルは個性、自分らしさの証。個性を輝かせ、自分らしくなれる。私はそんなお客様の願いを手助けできる理容の仕事が大好きです。そして、そう思えるまでに支えてくれた師匠、理容師仲間、家族には本当に感謝しています。
「自分を変えたい」
私も、以前そう思い悩んでいました。
子供の頃、男の子にも女の子にも混ぜてもらえず、1人寂しい休み時間を過ごしました。
自分自身の在り方に苦しみ、自信が持てず、命を絶とうと思ったことがあります。
組合員の理容師家族に生まれ、私も理容師になることを選びますが、父の背中が大き過ぎたし、未来すべてが描けない、漠然としたものでした。
「男として雇ってください!」
そんな毎日を変えたい、そう思った私は面接で、師匠にそう訴えました。師匠は、性別への偏見はない、そのうえでこう話してくれました。
「自分らしく生きていくために、理容師として技術を磨きなさい。お客様は、小野寺の性別ではなく、技術を信じて来てくれるんだよ」と。ハッとしました。
一番私を偏見の眼で見ていたのは自分自身だったのです。
師匠は癌になり旅だってしまいましたが、大切な事を気づかせてくれました。
師匠を失った私は経営も知らず業績は悪化。何とかしたい。
そんな時、宮城県仙台市にある若林支部の企画が目に留まります。
「仙台刈りギネスにチャレンジ!」
担当の方は、私が組合員でないことを伝えても、
「ぜひ!一緒に楽しいことして、理容業界盛り上げっぺし!」
この企画を切掛けに、私は理容組合に入会します。
「男なんだべ!小野寺がそう思っているなら男だ」
師匠を失った私にとって、自分そのものに向き合ってくれた先輩のその言葉は、何よりも心強いものでした。
私は積極的に組合の活動に参加するようになりました。
飲み会もそうですが、フェードやアイロン講習!お互いの技術を教えあう皆さんのその姿は日々励む自分への自信と勇気になりました。先輩方のご協力のもと、昨年のヘアーワールドジャパンカップオープンも挑戦させて頂きました。
現在では、YouTubeで理容の魅力を発信し230万回再生のスゴ技シャンプーの技が拡散され、国内外問わずお客様が来て下さいます。そして、学校で理容の魅力を話したり、ラジオのパーソナリティとして若手理容師の声も届けています。
培ってきた自信と勇気は私にかけがえのない個性をもたらしてくれたのです。
髪を切ることは、新しい自分に変わることの決意の表明。髪を切る側である私にとってもそうだったのです。
髪を切った先にあるのは、個性、自分らしさの確立。私はそんな理容の仕事が大好きです。
今もなお88歳で現役を続けている父を今はとても尊敬しています。
そして、そんな私を支えてくれた理容師仲間には本当に感謝しています。
だから伝えたい!「理容の仕事は本当にいい仕事だ」と。
未来の理容師を目指す人達のために、共に個性を輝かせ、理容の魅力を伝えていきましょう!