原始時代にはじまったヘアカラー~宗教的儀式がルーツ~

 

世界的に流行しているヘアカラー。いまやカラーなしにはヘアスタイルを語ることが難しい時代になった、といっても過言ではないでしょう。それでは、ヘアカラーはいつ、どのようにして生まれたのでしょうか。
その歴史をひも解いてみると、原始時代にはすでに宗教的な儀式の際に髪を装飾する行為としてヘアカラーがかつらとともに用いられていました。つまりヘアカラーのはじまりは、宗教的・呪術的な意味合いを持っていたのです。
古代エジプトでは「ヘナ」や「インディゴ」を用いて赤や青、緑など社会的地位を表すためにヘアカラーが行われていました。現在も使われているヘナは、5000年以上前からヒンドゥー教のボディペインティングに使われていたということですし、かのクレオパトラが髪や爪を染め、唇に色をつけていたという話しも有名です。
ギリシャ時代には、金髪が知と力を象徴するものとしてヘアカラーが行われていました。フェニキア産のアルカリ石けんで脱色したり、サフランで着色した小麦粉を振りかけて金髪を装っていたそうです。ローマでは黒系の髪が好まれ、クルミのカラとニラを煮詰めたもので染めて、やはり社会的地位を表していました。
このように、この時期までのヘアカラーは宗教的な意味合い、地位や権力を表すものとして、主に男性が行っていたものでした。ところが、ルネサンス期以後は女性中心の時代へと変わり、ベネチアン・ブロンドやブルネットなどの流行色も生み出しました。現在のように安全な方法がない当時では、ベネチアン・ブロンドにするためには頭の部分をくりぬいた幅広帽子をかぶり、一日中髪を日にさらして我慢しなければならず、またブルネットにするために硫酸銀と蒸留水を混ぜた薬剤を使用するため、ひじょうに危険なものであったといいます。
今日よく用いられ、市場に数多く出ているヘアカラー(酸化染料)は、1863年、ドイツ人のホフマンがパラ‐フェニレンジアミンという酸化染料を発見したのに続き、1833年にフランスのモネがこれをヘアカラーに用いる特許を取得して商品化したのがはじまりです。
比較的新しいヘアマニュキアはアメリカで開発されたもので、染料にはタール系色素を使用しています。これは、パーマネント(永久的)ヘアカラー剤のジアミン系染料と違い、毛髪表面から一部内部に浸透させ染色するもので、セミパーマネント(半永久的)ヘアカラー剤に分類されます。
ヘアカラーにはこのほか、毛髪表面に色素を付着させるスプレー式やスティック式の毛髪着色料があり、テンポラリー(一時的)ヘアカラーと呼ばれています。また、黒髪の色素(メラニン)を脱色するブリーチやヘアカラーの染料の色素を落とす脱染剤などがあります。


 

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