ホームページとメールの連携活用による連合会活性化への提案
-より楽しめてためになる理容組合を目指して-
狐塚 均(埼玉県)
目次
【序論】
【本論】
1、提案の概略
2、某研究会での経緯
1)研究会ホームページ内部の構築
2)紙面による会報との関わり
3)改善の成果
3、具体的提案内容
1)仕組み
2)全理連ホームページへの追加
【結論】
【序論】
少子高齢化と人口の減少化、景気の後退、理容学校入学者数の減少、低料金店の増加など、理容業にとって厳しい経営環境が続いています。また打開の基盤となる景気の回復については、今だ兆しも見えて来ません。
そのような状況の中、理容組合加盟店数減少の傾向は、歯止めが効かない状況です。資料1は、某県理容組合の平成18年から平成24年の組合員数の推移です。
この県の場合、脱退者の数は、毎年100人以上です。1年で5%程度が組合から離れて行く結果となっています。
もちろん県により数値は違いますが、傾向は各県共通していることと思います。脱退者は、組合に希望が持てないまま去って行ったことでしょう。組合には、教育面や共済面など多くのメリットがあります。しかし、この状況から見ても、なかなか良さが伝わっていないというのが現実のようです。
組合は、もっと楽しめるものであって良いのではないでしょうか。楽しめて、よりためになる。そのように組合の魅力が増せば、組合員の満足感が高まり、脱退者の減少にも繋がると思います。<BR>
本提案は、そのような現状に対する一つの処方です。内容は、時代の産物でもあるインターネットを活用して、楽しめる理容組合になるための施策です。
某県組合員数 (2月末集計) |
|||
平成 | 組合員数 | 前年度比 | 減少人数 |
18 | 3876 | ― | ― |
19 | 3555 | 91.7 | 321 |
20 | 3433 | 96.6 | 122 |
21 | 3308 | 96.4 | 125 |
22 | 3198 | 96.7 | 110 |
23 | 3087 | 96.5 | 111 |
24 | 2943 | 95.3 | 144 |
平 均 | 95.5 | 156 | |
資料1 |
【本論】
1、提案の概略
我が国のインターネットの環境は、年を追う毎に急速に進んでいます。今や多くの人がパソコンや携帯でホームページ(ウェブページ)を閲覧したり、メールを使ったりしています。しかし4~5年前は、今程ではありませんでした。それが10年前ともなれば比較にならない程です。この傾向は、今後も更にスピードを上げて進んでいくことと思います。
全理連でも、早い段階でホームページを開設されました。ホームページを通しての貴重な情報の伝達は、一組合員の立場としても大いに役立っています。今年2月に、沖縄で開催された全国理容競技大会でのインターネット生中継は、正にこれからの時代を象徴したものでした。そして今後の教育活動や情報伝達の在り方にも、各方面に大きなヒントを与えることとなりました。
また各県組合や、各支部でも独自にホームページを作り、組合活動に活かしているところが少なくありません。提案の概略は、このような環境を利用し全理連のホームページ上に、組合員が参加をして楽しめる新たなコーナーを作り、更新情報を随時組合員にメールで知らせるシステムです。
ここでの参加とは、閲覧や投稿をする側と、企画をする側の両方を指します。組合員が、ホームページの製作に関わるということです。正に組合員が創る、組合員のためのページです。そしてこの提案は、インターネットの便利な部分と、組合員の力を組み合わせることで、今後新たな成果を創造する切っ掛けとなることを願ってのものです。
2、某研究会での経緯
1)研究会ホームページ内部の構築
私は、全国組織の理容技術研究会に席を置いています。2011年4月から私は、その総本部の「情報システム部」という部署を担当することになりました。そこでの情報システム部とは、会のホームページやメール等の管理をするための部署です。私が担当する以前、会のホームページは、会の簡単な紹介程度のものでした。また、更新なども殆どしていない状態でした。
私はその担当になってから、この環境を活用して会員がもっと楽しめて、ためになる方法はないかと考えました。そしてホームページの中に、色々なコーナーを設けました。その内容を、研究会の許可を得てここに紹介致します。
資料2は、2012年5月現在の会ホームページの、トップのページの端に表示してあるホームページ内のメニュー部分です。メニュー上部は、主に会員外向けの内容です。中程から下部は、会員向けです。このメニューの下の方の部分は、会員が関わることが出来る参加型のコーナーです。
参加型の部分だけを上から列記しますと、「会員HP・ブログ」「会員リレー」「会員メッセージ」「会員発表」「特別講座」「会員外便り」となります。それぞれの説明は、組合に置き換えた場合を兼ねて後述します
資料2
2)紙面による会報との関わり
研究会には元々、紙面構成で定期的に刊行している会報があります。ホームページで行うことは、紙面上でも似たようなことは出来ます。しかし、ホームページで行うと紙にはない次のような良さがあります。
① 掲載の作業が簡単である
② 投稿量など制限に捉われずに原稿を受けることが出来る
③ 鮮明な写真はもちろん、動画の掲載も可能である
④ 即時性があり、情報伝達における地域間格差の解消になる
インターネットでの特性を活かすことで、情報の伝達が効率的になります。但し、紙面の会報を止めた訳ではありません。むしろ二つを関連させて、ホームページへの興味を促すような記事を会報に掲載したり、また逆にホームページ内に会報への興味を促すようなページを設けたりしています。
3)改善の成果
会員がホームページの中に参加することで、会員同士が主役になったり、受ける側になったり、楽しい情報交換の場が生まれました。「会のホームページがより身近なものになった」という会員の意見も多く聞きます。
1年を経て、全国の会員同士の絆が強固になり、会員の会への愛着心も高まっていることを感じています。その結果「楽しめて、ためになる研究会」に向けて大きく前進していることを確信しました。
また研究会ですから当然、講習会などの開催をしています。しかし、仮に講習会への参加が遠退いた会員が居たとしても、このシステムから得られる情報の価値が、それだけでも十分満足を感じて貰えるような状況になることを目指しています。
3、具体的提案内容
1)仕組み
提案の具体的な内容は、前項での研究会で行ってきたことを、全理連に当てはめて行うということです。研究会と全理連では、立場が違います。また、全理連のホームページは、既に高度化されています。しかし、この仕組みを活かすことが出来る点においては、共通しています。
研究会でやっていることと同じように、ホームページ内に参加型のコーナーを作り、更新した時は、そのことを組合員にメールで知らせます。メールには、更新したページが簡単に見られるように、メール内に更新ページを繋げておきます。更新した時、このようにメールで知らせることにより、ホームページの閲覧回数は、急激に高まります。
組合員にメールを送るためには、組合員のパソコンか携帯のメールアドレスを把握する必要があります。メールアドレスの把握は、今の組合の組織を活用すればそれほど難しいことではありません。
提案の先の部分の話になりますが、組合員のメールアドレスが整備されると、様々な面で組合内での、質の高い情報伝達が可能となります。もちろん完全には、全員のメールアドレスを把握するのはかなり難しいと思います。そのため公式な連絡としては、制限が発生します。しかし、それでも大いに役立つものとなることは確かです。
2)全理連既存ホームページへの追加
既存の全理連ホームページは、今の形をそのまま残し、組合員参加型のコーナーを新設します。次の記述は、前述した研究会ホームページでのメニューを、そのまま組合型に置き換えてみたものです。
① 組合員サロンHP
組合員のサロンのホームページをリンク(ページとページを繋ぐこと)させます。もちろんこれは、公開に協力して貰えるサロンが対象です。今は、ホームページを持つサロンが数多くあります。これを見た組合員は、営業のヒントを見つけることが出来ます。また、自サロンのホームページ作成の参考にもなります。
② 組合員個人的ブログ
ブログは、個人が気軽に記載することが出来る、インターネット上の日記のようなものです。あくまでもサロンのブログではなく、組合員やその従業員の個人的なブログをリンクさせます。当然これも希望者に限りますが、ブログのリンクは、組合員同士のコミュニケーションになります。
③ 組合員リレー
組合員が一人づつ自身の趣味や、近況を紹介して、次の組合員を指名してリレーをしていくものです。文章や写真、または動画を活用して趣向を凝らした自身の紹介は、面白さが高まります。このリレーは、知人から知人に伝わっていくため、組合員同士の繋がりが最も出るコーナーです。その繋がり履歴を見るだけでも楽しむことが出来ます。
④ 組合員メッセージ
組合員が自身の主張を述べることが出来る場です。内容としては、全理連が行っている「理容師メッセージ」のようなものです。投稿の条件も文字数など、なるべく自由にした方が豊かな発想に繋がります。組合や理容業界を活性化させるような、有意義なものが出てくることと思います。
⑤ 組合員発表
一般の組合員が、理容に関する技術や理論及びメニューを発表するためのコーナーです。普段発表の機会が余りない人でも発表することが出来ます。これを見た組合員は、仕事上の参考になります。発表者にとっては、メニュー自慢・技術自慢がたっぷりと出来ます。敢えて言えば、自己満足も許されるコーナーです。
⑥ 特別講座
前項の組合員発表は、読み切りのものですがこの講座は、基本的に連載型です。主に全理連中央講師や各県の講師などが担当をします。高いレベルの内容ですので組合員は、有意義な情報源となります。また担当の講師は、業界や組合への貢献をすることが出来、更に自らの講師活動の宣伝にもなります。
将来的には、有料講座などを設け、限定された人だけが、ページを開くこと出来る仕組みを取り入れると良いと思います。そうすることで、全理連の新たな教育のシステムとしても発展して行きます。
⑦ 支部紹介
各支部の紹介です。支部のホームページの紹介もここに入ります。互いの支部を知ることで、支部間の情報交換の場となり、支部活性化の援助になることと思います。
⑧ 組合員外便り
組合員直接の参加型ではありませんが、業界外や業界関連業者など組合員以外の方からの、組合員へのメッセージです。場合によっては、インタビュー形式の動画でもいいと思います。但し、これも組合員が企画・実行をして行くことが理想ですので参加型に入ります。
全てのコーナーに共通しますが、これらの投稿は、全て不定期を基本とします。もちろん目安は設けますが、なるべく制限の枠がない方が、内容の向上に繋がります。時には、間が空いたり、また重なったりで良いと思います。そしてアップしたものは、全てそのコーナーに残しておきます。そのため、何時でも誰でも過去の記事を見ることが出来ます。
【結論】
インターネットの活用は、人の温もりが結果に出るものです。利便性を人がどう扱うかにより成果が変わります。本提案は、これからも拡大し続けて行く大量情報化時代への、大きな足掛かりになります。これを進めて行くことで、組合内での情報伝達システムは、様変わりします。情報伝達の効率化は、業界そのものを成長させます。特に今は、時代の後押しがそうさせるとも言えます。そのためにも先ず、今出来ることから始めることが大切です。
このシステムは、完成することがありません。常に改良を求めていく性質のものです。その結果、進化をし続けます。研究会では、全国の会員の中でパソコンに詳しい会員がいて、数々助言を頂きました。組合員数は、所属研究会の百倍以上です。その数に比例して組合には、パソコンに長けた人や、発想力に富んだ人が沢山いるはずです。正に組合員の英知と想いが創っていくものです。
この今も、組合を辞めたいと思っている人が全国には居ると思います。そんな人が近い将来「あの時、辞めなくて良かった」と思って貰えるような組合になれたら、素晴らしいことではないでしょうか。
理容組合は、過去苦しい時代、組合員が一丸となって問題に取り組んで来ました。そして荒波を乗り越えて来ました。全理連の唱える「やる気・勇気・元気」のスローガンで、力を合わせ実行して行けば、きっと組合員が夢を描ける組合が生まれるはずです。
楽しめる組合、良きライバル関係が築ける組合、組織力を活かした組合。私は、組合員が明日に希望の持てるような、組合組織になることを切に願っています。なぜなら希望は、組織にとっても人にとっても、最も大切なものの一つと思えるからです。