華僑理容師が得意としていたという、まぼろしの耳かき道具「ヒビキガネ」。音叉に似た形状のこの道具を耳の皮膚に触れた耳かきに添えると振動が伝わり、えも言われぬ快感だったとか。 大正末期から昭和初期にかけては、華僑理容師が「耳かき職人」として多く活躍していたことからよく見られたが、日中戦争の開戦とともに華僑の職人が減少し、ヒビキガネも姿を消していった。今では一部のマニアや、ヒビキガネの味を堪能したことのあるお年寄りからまぼろしの道具とされているという。 そのヒビキガネを現代に復活させたのが、新潟県新潟市の早川幹夫さん。新潟県組合の理事長でもある早川さんは、埋もれている理容技術の掘り起こしという意味も含めて、理容ミュージアム(東京都渋谷区)に残るヒビキガネを研究し、鍛冶技術で知られる新潟県三条市の鍛冶職人もお手上げだったという復刻を約1年半の期間をかけて成功させた。 |
ヒビキガネを耳にあて、ヒビキを楽しむ早川幹夫さん |
復刻されたヒビキガネ「天母」。500本限定で販売されている |
「分析したところ、その振動から、科学的に解明されていない癒しの周波数“1/fゆらぎ”が出ていることが分りました。現代の金属加工技術をもってしても、その再現が難しく大変苦労しましたが、なんとか復刻できました。当時の鍛冶職人の技術には驚かされますね」と、製作時のエピソードを語る早川さん。 職人も「もう二度とやらない」と言っていることから、製作した500本もまぼろしの500本になるでしょう、と笑顔を見せる。 その500本は㈱光文堂(℡0823-87-3176)でヒビキガネ「天母」(のぼり、スコープとセットで29,800円)として販売されている(東北地区限定)。 (理楽TIMES H22.11.1付けNo.422掲載) |