平成20年度

 全国理容連合会では業界の振興、活性化を目的に、理容業従事者の皆さまより、ご意見やご提言を振興論文として募集しています。平成20年度は11編の応募があり、審査会の結果、次の論文が受賞しました。
※最優秀・優秀賞はテーマをクリックすると内容が見られます。

テーマ 氏名(敬称略) 組合
最優秀 理容業が取りくむべき「感性価値創造」 鳥谷 一弘 鳥取県
優 秀 イベントは人を成長させる「仲間との10年」 高宮 隆浩 山形県
団塊の世代の店主さんへ 都築 りえ子 愛媛県
奨 励

夢と希望につなぐ全国理容競技大会

田中トシオ 東京都

 

2009年理容業界振興論文総評
審査委員長
尾﨑 雄(生活福祉ジャーナリスト)

甲乙つけがたい内容

 理容業界の危機感は、遂に、ここまできたか! 最優秀賞「「サインポールの灯を消さない」~理容のイメージを考える~」の筆者(63歳・男性)は、「このままでは理容は、社会的使命を終えたとして免許が廃止される怖れさえ出ている」と警鐘を鳴らした。これほど深刻な危機感を訴えた論文は、私が審査委員会に参加して以来、初めてである。
 ここに到っては、小手先的な経営論やマーケティング論的な業界振興策では不十分だと深刻に受け止める見方は多いはず。その一つが最優秀賞である。幕末・明治期、理容業の時代変革に果たした社会的な役割を、現代の視点から振り返り、時代を先取りした「理容」の精神を取り戻せと提案する。いまこそ理容業のアイデンティティー(独自性)を守り、理容業の社会的役割を示すべきだと主張する。「身嗜みを整える」ことは、「自己をコントロールして他者と共に生きる事を表す」という社会人の行為だとすれば、確かな技術を携えてそれを代行しアドヴァイスを行う理容師の仕事には重要な社会性がある。理容店は「人を社会化させる場所」なのだから。いたずらに美容・エステ産業にすりよるのではなく「社会には多様性が必要」だとし、「理容が理容のままでカッコよくなる方法」を追求することにこそ活路が見出せるという提案は新鮮で傾聴に値する。
 いっぽう、応募論文12点の半数が女性理容師によるものだった。これは画期的なことである。これまでも、理容店および業界の危機を、高齢社会に即した様々な工夫や経営戦略、新顧客開拓の取り組みに関する実践報告や提言は少なくなかった。そうした生き残りを求める提案が業界全体の行方を方向付ける戦略として機能してこなかったとすれば、最大の原因は業界の意識改革が遅れていたことではなかろうか。
 中高年男性客の確保と若い男性客の呼び戻しおよび女性客の開拓については個店レベルでは先駆的な試みや成功例があっても、“産業革命”として普遍化しなかったとすれば、理容業界がわが国のサービス産業においてまれに見る「男性社会」だったからではないか。
 その意味で、優秀賞「女性の感性と男性の理解が業界を変える」に注目したい。アンケート分析に基づいて女性理容師の位置づけを明らかにし、男女共同参画による理容界の構造改革が業界生き残りを賭けた突破口だと主張する。その主張を、結果的に補完する論文も少なくなかった。
 最優秀賞と優秀賞「女性の感性と男性の理解が業界を変える」は、問題の本質に対する光の当て方が異なるにしても、いずれもコトの本質を見据え、深い眼差しで分かりやすく説いている。

【審査委員】

委員長 尾﨑  雄 (生活福祉ジャーナリスト)
委 員 小宮山健彦 ((財)全国生活衛生営業指導センター専務理事)
松井 義三 (全国理容連合会 副理事長)
橋本 幸一 (   〃      〃  )
山崎 哲茂 (   〃      〃  )
松岡 武義 (   〃    組織委員長)
橋本 勝也 (全国青年部会議議長)
オブザーバー 久保田 豊 (厚生労働省健康局生活衛生課課長補佐)
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