青森県弘前市の工藤満次さん(60歳)は、本名(みつつぐ)以上に「まんじ」という名前で知られている人だ。津軽三味線まんじ流の家元という顔も持つためである。
10歳の頃から理容師の兄に津軽三味線を習い始めた工藤さんは、「プロよりうまくなる」という一念で稽古に専心してきたが、理容師免許を取得し、三味線とどちらをとるかの岐路に立った時に「絶対チャンピオンになる」と理容を選択。ここでも猛練習を積み、青森県大会優勝、全国大会出場へと結実した。
そのうちに、以前に工藤さんの演奏を見ていた津軽三味線の第一人者、白川軍八郎氏の口添えにより演奏会に出演、三味線奏者としても活動するようになり、数多くの演奏会、テレビ、映画などでその腕前を披露してきた。海外でも公演を行っており、昨年は外務省の依頼により、ロシアで開催された「日本文化フェスティバル」で演奏した。
地元では教室を開いて奏者を育てる一方で、県教育委員会から講師に任命され、小中高校で津軽三味線の指導に当たっている。「津軽三味線は今、全国ではブームですが、地元は必ずしもそうではない。もっと地元に根付かせなければいけません」と、県組合教育部長、講師会会長、弘前支部長としても多忙な中、地元伝統芸能の普及に努める。
教えてきた生徒を一堂に集め、300人規模の大合奏会を催すという構想の実現も近いだろう。
(平成16年2月1日付け№341掲載)