埼玉県の小川泉さん(68歳)は、理容師であるとともに書道家の顔も持つ。
小川さんの住む寄居町は古くから芸術・文化の盛んな土地で、画家や書家などを多数輩出している。そうした環境の中で、子どもの頃から絵画に親しんでいたという小川さんの書道との出逢いは、36歳の時だった。
父親が病気で倒れ、外で描くことが多い絵画を続けることができなくなってしまった。しかし、それでも何か芸術的な趣味は持っていたい――そう感じていた小川さんは、家の中で創作活動ができる書道にその道を求めた。それから毎日33枚、一カ月で1,000枚を書くことを決心し、日々精進した結果、わずか3年半で師範となる。
その後も、毎日書道展、埼玉書道展など、数多くの書道展に出品、入選を重ね、この3月26日から28日までは、寄居町立総合体育館で開催される県北書道展で審査作家として出品する予定だ。
小川さんはまた、全理連美術展でも15年連続無審査など入賞の常連となり、その実績により、第25回から28回の間、書道部門の審査委員を務めた。さらに、県組合副理事長を務めるなど、組合運営にも尽力した。
「毎日が切磋琢磨です。理容業も書道も手が動かなくなるまで続けたい」
小川さんは、今も毎朝午前3時に起床し、1時間かけて墨をすり、70文字から成る大作を仕上げてからサロンに向かう。
(平成16年3月1日付け№342掲載)