理容展望「柳壇」の選者を務める天野文緒さん(82歳。本名・文夫)は、明治時代開業の老舗理容店の3代目として、大正11年、東京・港区に生まれ、18歳のときに理容師免許を取得した。
小さい頃から勉強が好きだったという天野さんは、大学にまで進学したが、卒業後は家業を継いだ。現在は、理容業を引退し、三田ステーションビルのオーナーとして活躍している。
文芸の世界には、お客さまの薦めで俳句から入ったそうだが、後に川柳界の第一線で活躍していた理容師、大沢深雪、黒坂幸花の両氏(いずれも理容展望「柳壇」選者)に師事することに。その後は、作句の傍ら、江戸時代の川柳に関する文献を紐解くなど、その柳歴は45年にもおよぶ。
身近な出来事、問題をテーマとし、人の心の機微をユーモア交えて表現する“ポエム”と、川柳を分析する天野さんは、「毎日、不特定多数のお客さまと接する皆さんにとって、川柳は比較的取り組みやすい環境にあります。上級者の句の作り方を参考に、気軽に楽しみながら川柳に挑戦してほしいですね」と、理容業界の“柳人”に対する思いを熱く語る。
また、これから川柳に触れてみたい初心者の方には、「概して“説明句”になりやすいので、切り口、着眼点をよく考え、その上でひねりを効かせ、何かを訴えていくような気持ちで取り組めば…」と、アドバイスしてくれた。
(平成16年7月1日付け№346掲載)