今年3月、東京都美術館で開催された第48回新槐樹社展で、理容師をモデルに、理容師が手がけた彫塑作品が入賞を果たした。
作者は、青森県の坂本貞夫さん(69歳)。そして、「プロフェッショナル」と題した作品のモデルは、青森県組合の盛田健理事長。ともに十和田で理容業を営み、旧知の仲だという。
坂本さんは、盛田理事長の理容業界への愛情と貢献に対する敬意をあらわすために作品化したと話し、それだけに今回の入賞は喜びもひとしおだという。
坂本さんの彫塑との出あいは、50歳の時に理容学校の講師を依頼され、改めてデッサンを学ぼうと訪ねた美術教室で勧められたことだった。以来、仕事時間の前後や休日に、店舗とは離れたところにある作業小屋(アトリエ)で創作に励み、現在までに40点にも上る作品を製作した。
新槐樹社展では既に7回も入賞して正会員となり、他の美術展でも何度も入賞している坂本さんだが、現在も本業のかたわら、仕事の合間にふと思いついてデッサンをしたり、外出時にはモデルになりそうな人をカメラにおさめるなど、彫塑のことが頭から離れることはないという。
これまでは、ほとんどが人物作品だったそうだが、この秋の青森県展で初めて人物以外をテーマとした作品で入賞した。
「今は来春の新槐樹社展の出品作を構想中です」と話す坂本さんの創作意欲は、ますます高まるばかりだ。
(平成16年10月1日付けNo.349掲載)