Vol.29 南極観測隊を支えた理髪室 名古屋海洋博物館(愛知県)

 

ふじの外観

 広大な伊勢湾を一望する名古屋港。港にたたずむその船の中に、南極に渡った理容室がある。
 南極観測船「ふじ」は老朽化した先代の「宗谷」に代わる砕氷船として、1965年に就航した。進水式の際には美智子妃殿下(当時)が臨席されるなど、華々しい船出を飾った。およそ20年にわたり、観測隊を南極まで送り届けたが、その役割を終えた後は名古屋港で係留、名古屋海洋博物館に展示されている。
 4層からなる船内の地下1階に足を踏み入れると、観測員と乗組員が居住していたフロアがある。寝室や医務室を通り過ぎると、理髪室にたどり着く。
 理髪室には、サインポール、理容椅子、調髪道具などがあり本格的だが「ふじには理容師がいなかったため、手先が器用な乗組員が無料でカットしていました。散髪のみで、洗髪やシェービングはしていなかったようです」と学芸員の山口真一さんは語る。スポーツ刈りに近い髪型にする乗組員が多かったが、結果的には虎刈りにされてしまう人もいたことから、船内の理髪室は「タイガーバーバー」という愛称が付けられていたそうだ。
  極寒の地に赴く男たちの髪をカットした理髪室。南極観測船ふじで遠い南極への旅に思いを馳せてみてはいかがだろうか。

船内の理髪室。精巧な造形のマネキンが往時のカットを再現している

 

  名古屋海洋博物館
  住所/愛知県名古屋市港区港町1番9号
  アクセス/地下鉄名港線「名古屋港」より徒歩5分
  入場料/300円

 

(理楽TIMES H24.11.1付 No.446掲載)

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