「モルタルで仕上げたギリシャ神殿のような外観、おがくずを含んだ和風の三和土…」―
平松理容店 |
茨城県石岡市の平松理容店は、「看板建築」という関東大震災後に流行した建築様式を現代に伝える建物で国の登録有形文化財にも指定され、市の観光名所となっている。
平成16年に文化庁から登録有形文化財に指定された |
「看板建築」とは、建物の前面が看板のように平坦で、その部分がモルタルや銅板で装飾された建物のこと。江戸期以来、商店は軒を大きく張り出すのが一般的で、その張り出し方が商店の格をも表していたが、関東大震災後の区画整理で土地が狭まったことから敷地の有効活用が求められ、前面を垂直に立ち上げ、かつ震災の教訓から耐火性のあるモルタルなどで表面を覆ったスタイルが生まれ、東京を中心とした地域へ広がったとされる。
当時、洋風デザインが人気だったことから前面は洋風、中に入ると暮らし慣れた和風という建物が多く、現在では往時の人々の粋と見栄を表したレトロな建物として人気を博している。
平松理容店は、看板建築が多く残ることで知られる石岡市でも最古の看板建築。現店主の平松美代子さんの祖母・志なさんが昭和3年に店を開設して以来、火災や戦争、大地震を経験しても壮麗な姿を守り、地元住民からは「西洋床屋」の呼び名で親しまれている。
建設から90年近くが経った今も当時の雰囲気をそのままに元気に営業を続けており、平松さんは「手入れの努力を怠らず、この堂々とした姿をいつまでも守っていきたいですね」と、親子3代の歴史に胸を張った。
(理楽TIMES H26.4.1付 No.463掲載)