自分で、母親の膝枕で、プロの手で…耳かきには様々なシーンがあり、またそれぞれにドラマがある。その魅力を社会に発信しているのが、フリーライターの上野玲さん。耳かきを愛する自称「ミミカキスト」だ。
上野さんの耳かきとの係わりは、取材で全国を旅したおりに、「かさばらず、高くなく、記念になるもの」として耳かき棒を買い求めたことに始まる。気がつくと500本にも及ぶコレクションとなり、それをきっかけに、様々な角度から耳かきを見つめることになった。
現在、「耳かきこしょこしょ」(双葉社・絶版)、「耳かきがしたい」(JIVE・1260円)の2冊の 著書があり、コレクションの紹介、耳かきの歴史などから、プロの耳かきが堪能できる理容店の紹介、「耳かきをするとよい子に育つ説・その発達心理学的解剖」という自説の検証、「ティファニーに耳かきは売っているのか」という疑問を検証するニューヨーク現地取材など、耳かきにまつわる様々な情報が詰め込まれている たかが耳かき、されど耳かき――耳かきを『小さなユートピア』と称する上野さんは、「条例などの取り決めもありますが、多くの理容店で耳かきができると嬉しいですね」と話す。
最近では、料金表に挙げていないサロンもあるが、理容店の快感メニューとして今も根強いファンが多い「耳かき」。上野さんもその一人だ。
(平成18年9月1日付けNo.372掲載)