栃木県鹿沼市社会福祉協会に、昭和58年から24年間、匿名で毎月千円の寄付が送られてきた。差出人は「天の使い」。毎月、「春めいてきましたね」などと書かれた手紙も添えられていた。
その主が昨年10月、名乗り出た。送り主は、栃木県組合鹿沼支部の小林美恵子さん。
きっかけは、店舗を改装した感謝の気持ちを社会に貢献することによって、「世の中にお返し」したいと思ったことだった。
当初は、家族にも秘密にしていたが、ご主人の秀雄さんに話したところ、喜んで賛成してくれたので、それからは夫婦で続けてきた。
しかし、平成9年に理容師として立派に成長していた後継者の俊雄さんを病気で失い、昨年には秀雄さんも手足の神経障害で入院した。そのため、4代続いた理容店を閉じなければならなくなった。
兄弟姉妹にも理容師が多く、実家は約300年前から理容店を営んでいるという老舗の環境の中で育った美恵子さんにはつらい決断だった。
収入が減少し、寄付を続けることが難しくなった時、俊雄さんが亡くなった時も、秀雄さんに励まされ、寄付を続けることを励みとしてきた。
昨年、300回まで続ければ、病床のご主人が喜んでくれるに違いないと、残りの22回分を全納することに決め、名乗り出ることになった。
その心温まる善行に、全国理容連合会からも感謝状が贈られた。
(『全理連』 平成19年2月1日付けNo.377掲載)