「職人」という言葉からは、卓越した技術を持ちながら、寡黙で融通のきかない仕事一筋の男性というイメージを連想するかもしれない。
しかし、女性の中にも自分の持つ技術で稼ぎ出し、困難な状況を乗り越え、自立して生きる道を築いてきた職人が大勢いる――
東京都大田区の昭和のくらし博物館では、そんな女職人たちに注目し、昭和という激動の時代を生きた11人の女職人を取り上げた企画展「昭和の女職人展」を開催している。
理容師、美容師、洋裁師、和裁師、袴仕立て師、扇子職人、つまみかんざし職人、手描友禅師、型絵染職人という9つの職業に、それぞれテーマとなる人物を設定し、業界の歴史を踏まえながら、その職人の生き様を本人の言葉と当時の写真で解説、紹介する。
今でこそ女性の社会進出が進み、社会的地位が確立されてきたが、職人という厳しい世界で常に低く見られざるを得なかった苦労、その中でも前向きに、そして着実に自分の道を切り開いてきた女職人の足跡を偲ばせる内容だ。
理容師で取り上げられたのは松本チエ子さん(東京都・92歳)。小学校卒業と同時に理容店に奉公に出て以来、生まれ故郷の御殿場から、横浜、東京と、その腕一本で渡り歩いた女性理容師だ。
昨年12月10日には、松本さん本人を招いてトークライブ・イベントを開催し、厳しかった修業時代や店を出したときの経緯など、生の声が披露され、1月14日には美容師の福田好子さんのトークライブが開催される予定だ。
本物のキャリアを持った女職人たちの足跡を肌で感じてみては。会期は3月4日まで。
●昭和のくらし博物館
住所/東京都大田区南久が原2-26-19
℡03-3750-1808
交通/東急多摩川線「下丸子」、東急池上線「久が原」より徒歩8分
開館/10時から17時(毎週月曜休館)
入館料/500円
(『全理連』 平成19年1月1日付けNo.376掲載)