Vol.43 徳川家の祖先の髪が収められた寺 (神奈川県相模原市・無量光寺 お髪塚)

 

 全国には髪や櫛を祀った「髪塚」や「櫛塚」が多数あり、その多くが、理容業者らが髪や櫛への感謝を表す中心的存在として建立したものだが、神奈川県相模原市の当麻山無量光寺には、徳川家にまつわるエピソードを持つ「お髪塚(おはつづか)」と呼ばれる塚がある。

お髪塚。建造物としても貴重とされる

  南北朝の頃、応安元年(1368)に新田義宗が南朝方について挙兵した際、徳川家康の先祖にあたる世良田左京亮有親、松平太郎左衛門尉親氏父子が義宗側につき戦ったが敗戦し、父子共々落ち延びたのがこの寺で、父子は剃髪を受けて出家し、その髪をこの塚に埋めたことから、村人から「お髪塚」と呼ばれるようになったというものだ。
 その後、有親は寺で亡くなり、塚に遺骨を納め五輪の塔を建立し供養したと伝えられており、息子の親氏は西下し三河の地で松平家を起こし徳川家へと繋がったのだそうだ。
 現住職の飯田覚隆氏は、「武士が剃髪して髪を埋めるという行為には様々な想いがあったことでしょう。江戸時代には、そのことを知った家康が当寺に寺領を寄付したそうです」と塚について語っており、現在でも催事の際には花を手向けて供養しているのだという。
 徳川家は理容業祖・采女亮とも関係が深く、古くは家康の月命日の18日が理容店の休日とされていたほど。旅のついでに立ち寄ってみてはいかがだろう。

一遍上人ゆかりの時宗根本道場として信仰を集める無量光寺の本堂

 

無量光寺
神奈川県相模原市南区当麻578番地
毎年10月23日にはご本尊御開帳で賑わう

(理楽TIMES H30.1.1 付No.508掲載)

Translate »