「身体に響く太鼓の鼓動にワクワクしっぱなしなんです」 ――聴覚に生まれつきの障害を持つ愛媛県四国中央市の理容師・石川康文さん。音が聞こえないというハンデを乗り越えて和太鼓の演奏グループを結成し、人々に夢と希望を与えている。 石川さんが太鼓の魅力を知ったのは22年前。初詣にと、大晦日の夜に近所の三島神社へ出向いたとき、地元の伝統芸能「いわくら太鼓」に出合った。 「お参りを済ませて歩いていると身体に響く振動があって、目をやるといわくら太鼓の演奏をしていました。見ていると胸がワクワクして、いてもたってもいられなくなっていました」。 聴覚障害によって、健聴者より世界が狭いことから視野を広めようという思いもあって、地元の同じハンデキャップを持つ仲間たちに相談しグループを結成。いわくら太鼓保存会の指導を受けながらの練習が始まった。 |
石川康文さん。2月20日には、この活動が NHK教育の番組「きらっといきる」で特集された |
「鼓龍会」の演奏の模様。一番右が石川さんで、 六尺太鼓を担当している |
最も苦労したのはテンポをつかむこと。聴覚障害者には「1、2、3、4」というリズムの感覚が無く、全員が同じテンポを理解するために、指導者が前に立ってリズムをとり、それに合わせて足踏みすることから始めた。その基礎練習を週2回、3年間繰り返して身体にリズムを叩き込み、平成2年5月、四国中央市福祉会館のこけら落としでデビュー。 現在では、いわくら太鼓保存会ろうあ部会「鼓龍会」と銘打ち、韓国との文化交流や地元イベントでの演奏、日本全国障害者大会への出場など幅広く活動している。 太鼓と出合い22年経った今も、変わらぬ興奮を覚えるという石川さん。この活動が一日でも長く続くようにと日々精進を続けている。 (理楽TIMES H21.4.1付けNo.403掲載) |