大覚寺、天龍寺、野宮神社―一年を通じて訪れる者が絶えない京都・嵯峨嵐山。その一角、百人一首に詠まれた小倉山の麓、亀山天皇御陵の近くに、理容の業祖・藤原釆女亮政之(ふじわらうねめのすけまさゆき)を御祭神として称え祭った御髪神社がある。
「髪は人間の最上部に位置し、御神より賜わった美しい自然の冠です。御髪神社は理容・美容等の髪や化粧に携わる業の始祖を祭神とする日本唯一の神社です」(同神社由来より)とあるように、御髪神社は髪の健康や美しさの御神徳をもつ日本唯一の神社として、理美容関係者はもとより、多くの人びとから厚く信仰されてきた。
境内には、願いごとをしながら切った髪を納めると御利益があるとされる髪塚があり、献納された髪は日々神官により祈拝を受け、また、毎年春・秋の御大祭日には業祖神奉祭と髪供養が行われる。
「やはり、月曜、火曜日には、理美容関係者をはじめ、理容師・美容師を目指す受験生も数多く来られますね」。神官の生嶌澄夫さんによれば、国家試験合格のお礼に再訪する人も多いという。
釆女亮政之が髪結職の起源とされる所以は、「亀山天皇の御代(1209~74)に、皇居の宝物守護にあたる武士であった藤原基晴卿は、御預かりの宝剱・九王丸紛失の責任から、三男・采女亮政之とともに、当時、蒙古襲来で風雲急を告げる下関に居を構え、髪結業を営み探索を続けた。これが髪結職の始めなり」(伝承史料・職分由緒書より)――とあり、以来、理容の業祖として崇敬されてきた。
御髪神社は、美しい髪に感謝するとともに、サロンを利用してくれるお客さまに、お客さまの髪を綺麗にスタイルアップしてくれる理・美容師に、その実現ための器具・粧材を提供してくれる関連商社に――髪によって受ける恩恵に皆が感謝し、自らの仕事に誇りを持つことの大切さを説いている。
一度参詣し、髪に携わる仕事の意義と誇りを再確認してみてはいかがでしょうか。
●御髪神社
住所/京都府京都市右京区嵯峨小倉山田渕山町10-2
℡075-882-9771
交通/嵯峨観光鉄道「トロッコ嵐山」駅前
(『理楽TIMES』 平成19年5月1日付けNo.380掲載)