Vol.7 櫛、こうがい、かんざし―― 女性の美を彩る髪文化 東京都青梅市 澤乃井 櫛かんざし美術館

 

世界的にも珍しい江戸切子の櫛、かんざしと小澤徳郎館長

 指輪、イヤリング、ネックレス・・・現代女性を飾るアクセサリーの種類は数知れないが、西洋文化が伝わる以前のアクセサリーと言えば「髪飾り」であった――かつて日本女性の美への欲求を一手に引き受けてきた櫛、こうがい、かんざしなどの髪飾りの魅力が楽しめるのが、「澤乃井 櫛かんざし美術館」(東京都青梅市)。  

 

 3つの展示室には、4,000点の所蔵品から、常時約400点が時系列で展示されており、江戸から昭和にかけての形、材質の変遷が楽しめるほか、季節に合わせた展示替えが行われている。

  現在の展示は「夏の展示」(9月2日まで)。館長の小沢徳郎さんが「涼しさの表現が見所です。冷房のない時代に、どのように”季節”と”涼”を味わっていたのかを感じてほしいです」と語るように、ガラスや水晶など、素材が涼しげで模様も夏らしい品が並ぶ。見た目だけでなく、ガラスや水晶のかんざしなどは、付け心地がひんやりとして気持ちが良いという実用性も兼ね備えており、先人の知恵を感じさせる内容だ。
 さらに、江戸期のものは、宝石文化が伝わる前であったことから、蒔絵や螺鈿などの技術と芸術性が価値に直結しており、装飾としての美しさだけでなく、芸術作品としても楽しめる。
 また、展示品とともにおもしろいのが、所蔵品にまつわるエピソード。たとえば、多くのかんざしの先についている耳掻きには、江戸時代の贅沢を禁止する「奢侈禁止令」が強く関わっているという。「耳掻き付きかんざしは、享保期(1716~1735)頃に発案され、定着して行きましたが、これは「奢侈禁止令」を逆手にとって、『贅沢品ではなく実用品だ』と言い逃れをするために、普及していったといわれています」(小澤館長)など、その時代背景と庶民の知恵が垣間見られる逸品ぞろいだ。

 先人が残した文化と知恵を肌で感じてみては。

春は桜、夏は涼、秋は紅葉など、時代による変遷とともに季節による変化も表した展示

●澤乃井 櫛かんざし美術館
 住所/東京都青梅市柚木町3-764-1
 ℡0428-77-7051

 

交通/JR青梅線「沢井」より徒歩10分
開館/10:00~17:00(月曜休館)
入館料/一 般600円(500円)
    学 生500円(400円)
    小学生300円(200円)
    ()内は団体様料金

 

 

 

(『理楽TIMES』 平成19年7月1日付けNo.382掲載)

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