「まずは見てください」。 指先でつまんだ髪の毛1本をレザーで切って見せたのは、千葉県市川市の秋山顕治さん。髪を切ったレザーからは「ビーン」と音がする。 「現在主流の替え刃式剃刀は、最も薄いもので0.08mmですが、しっかりと研ぎあげたレザーは、その何倍も薄く、髪の毛1本を切ってもその振動で音が響き、髪も飛ぶように切れます」と、刃物の切れ味を語る。 もともと、父親が「一九会」という研磨研究会の唯一の理容師会員であったことから、刃物やレンズ、宝石など、様々な研磨の達人を見て育ったという秋山さん。修業から帰った昭和54年から父の跡を継ぐように刃物研磨の研究を始め、「よく切れる」に「短時間で研げる」という要素が加わるよう、新しいことを試しては金属顕微鏡で刃を確認、ということを繰り返しながら独学で研究してきた。 |
普段は理容師として腕を振るう |
現在では、理容師の仕事のかたわら、研磨のプロとして理容道具はもとより、包丁や日本刀、さらには脳外科手術などに使用する特注小鋏など、業界内外から様々な刃物の研ぎの依頼が舞い込むようになり、名実ともに研磨の第一人者となった。 「刃物のことは大体わかったので、例えばスケート靴のブレードとか、新たな分野の研磨にも挑戦してみたい」と、探究心は止まらない。 |
研磨は庭のグラインダーで。100円ショップの裁ち鋏で練習したという。 |
(理楽TIMES H29.11.1付けNo.506掲載)