東京・墨田区でご主人とともに理容店を営む井口京子さんは、四大書道展のひとつ「読売書法展」で秀逸に入ったこともある理容師。毎年コンスタントに展覧会への出品を続け、昨年5月には、東京・江東区のモデルハウスで理容師の知人、故酒井治雄氏、富美子夫人と「三人展」を開催した。 幼少期から書道が好きだったという井口さん。全理連美術展に出合ったことをきっかけに、月に1度の教室と、週に4~5日は筆を持つ生活をはじめ、約30年継続している。 |
井口京子さん(鳩居堂社中展で) |
「もともとは大型の漢字の作品を書いていたんですが、現在は小さなかな文字の作品を創っています。漢字の作品を書いていた頃は、書かれている内容よりも『形』として文字を見てしまっていたんですが、かなをはじめてみて、書かれた内容をかみしめ、楽しみながらできるようになり、今本当に充実しています」と、月日を重ねてなお進化を続けており、現在は所属する会派の社中展にむけて、万葉集を書いているのだという。 「三人展では、私が書をやっていることを知らない方も含めて多くの方に公募展とは違った形で作品を見ていただけていい経験になりました。理容との両立は時間づくりが大変でしたけれど、年齢を重ねても打ち込めて、様々な出会い、人の輪をもたらしてくれた書の世界は私の人生に彩りを与えてくれています。全理連美術展に感謝です(笑)」と井口さん。今後も細く長く、書の道を続けていき、いつかは竹久夢二の「宵待草」を自分の文字で書いてみたいと夢を語ってくれた。 |
井口さんの作品 | 昨年行われた三人展の展示 |
(理楽TIMES H30.5.1No.512掲載)